投資には分投資と集中投資があります。一般的には分散投資がお勧めだと言われています。その理由は、前回の記事でお伝えしたように何かアクシデントがあった時に分散効果によってダメージを分散させてリスクを低下させる事が出来る為、安定した運用を行う事が出来ます。
では、集中投資はしない方がいいのだろうか?
危ないイメージしかないわ
確かにそうですね。でも使い方を間違わなければメリットもありますよ
基本的には、分散投資をする方が良いと思います。ただ、リスクを取ってもいいから大きく増やしたいと考えていたり、ここぞという時に集中投資を使ってみたりと、戦略的に集中投資を選択する事があるかもしれません。
今回は、集中投資についてのお話をしていきたいと思います。
集中投資とは
基本的に投資は分散投資をする事がセオリーとなっています。リスクを出来るだけ分散させながらも資産を増やしていくためには、リスクとリターンとセーフティーのバランスが重要となっていきます。そのバランスを保つためには、株式などのリスク資産に投資をする際には分散させることでバランスを保つ必要があります。
ただ、リスクを分散させるという事は逆に言えばリターンを犠牲にしているという事にもなります。
リスクを取ってもいいからリターンをより高めたいと思っている人であれば集中投資を選択肢にいれる人もいると思います。
私もそういった人たちの1人でありました。
リスクを取ってもリターンを高める為に集中投資をしていました。
上手く運用できれば大きく増えるかもしれないね
リスクを取ってもリターンを重視する戦略を採用していました
投資先を中国株に限定して、投資する銘柄も5銘柄にして集中投資をする事で、中国の成長性をより多く取り込み、投資資産をいち早く増加させることを狙っていたのです。私の試みは上手く行き、170万円を投資していたテンセントという中国株は30倍になり、170万円が5100万円に膨張するという嬉しい結果となりました。
投資をしている方であれば、ウォーレン・バフェット氏の名前を聞いたことがある人が多いと思います。投資の天才と言われており、投資で築いた資産で世界の5位の富豪になっています。上位にはマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏やアマゾン創業者のジェフ・ベゾフ氏などの世界的な企業を作り上げた起業家ばかりの中で、投資で資産を作り上げたウォーレン・バフェット氏がランクインしているのは凄いですよね。
そのバフェット氏は集中投資で資産を増やしていくスタイルです。過去には資産の3分の1をコカ・コーラに投資して資産を飛躍的に大きく増やしました。現在では、iPhoneを作っているアップルに集中投資をしており、アップルは投資資産の40%を占めるほどになっています。
このように、集中投資は投資先を絞る事で資金効率が計られ、大きく資産を増やすスピードを上げていく事が出来ます。その反面、上手く行かなった時には逆の反動が投資家に襲い掛かり、資産を大きく減らしてしまう原因となってしまいます。
通常は、投資資産が大きく減ってしまう事は立ち直る事が出来ないケースに陥る危険性があるため、一発退場などのリスクをさけるために、集中投資よりも分散投資が推奨されています。基本的には、初心者を含めて多くの投資家にとってお勧めの投資方法は分散投資となります。
ただし、リスクをしっかりと管理しながらリターンを大きく狙いたい場合には集中投資という選択肢を選ぶという事も長い投資人生の中には1度ぐらいはあるかもしれませんね。
では、次は集中投資のメリットとデメリットを見ていきたいと思います。
集中投資のメリット
集中投資におけるメリットとは何があるのだろうか。大きく分けて2点になると思います。
集中投資のメリット
「管理が楽(細かく観察できる)」
「大きく増やせる可能性がある」
では、1つずつ確認していきましょう。
管理が楽(細かく観察できる)
「管理が楽」だというと簡単に管理が出来るという風に捉えてしまうかもしれませんが、ここでいう「管理が楽」というのは、保有する銘柄数が少ないと、それぞれの銘柄に掛ける時間(業績や業界を調べたりする時間)を増やす事が出来るという事です。
逆にいえば、しっかりと確認する事が出来ないのであれば集中投資をするべきではないとも言えます。
分散投資をしていると、20銘柄ぐらいの銘柄を保有している事が多いです。20銘柄もあると、それぞれの決算発表の際に決算内容を確認する事は非常に手間です。なんとなくニュースを見ながら、売上と利益だけを確認するぐらいで終わってしまうと思います。
保有している銘柄数が多いと、場合によっては気が付いたら決算が終わっていて、だいぶ後から決算内容を知ったなんて事もあるかもしれません。分散投資で銘柄数が多いと、サラリーマンのように働いている人々にとっては銘柄を確認・観察する時間が足りなくなってしまいます。
3銘柄や5銘柄程度の少数の保有銘柄で集中投資をしている場合は、確認する銘柄数も少ないので、しっかりと銘柄分析をする時間を取る事が出来ます。それぞれの決算内容をしっかりと確認する時間を取る事が出来るというのは、投資においては重要な事でもあります。
大きく増やせる
集中投資を選ぶ際に、一番の魅力が当然ながら大きく増やせるという事ですよね。
では実際にどれくらい違うのかを、500万円の投資資金を分散投資(20銘柄を保有)する場合と集中投資(2銘柄を保有)する場合で比べてみましょう。
※分散投資は20銘柄を25万円ずつ保有。集中投資は2銘柄を250万円ずつ保有
1銘柄が10倍に大きく増えて、他の銘柄は株価が変わらなかったケースを想定します。
投資方法 | 株価が10倍(1銘柄のみ) | 株価は変化なし(分散は19銘柄) | 投資資産合計額 | 増加金額 |
---|---|---|---|---|
分散投資 | 25万円×10倍=250万円 | 25万円×1倍×19銘柄=475万円 | 250万+475万=725万円 | 225万円 |
集中投資 | 250万円×10倍=2500万円 | 250万円×1倍×1銘柄=250万円 | 2500万+250万=2750万円 | 2225万円 |
結果にかなりの違いが出ますよね。分散投資をした場合は、1銘柄が10倍に大きく上昇したとしても資産全体でみれば増えた割合は少しであり、10倍にも増えた銘柄があるのに投資資産全体で増加した金額は225万円だけとなります。分散投資をした場合の資産全体の増加率は45%(1.45倍)程度となるのです。
一方で集中投資をした場合は、1銘柄が10倍に大きく上昇すると資産全体への増加寄与度は非常に高くなり、資産全体で増えた金額は2225万円という大金になっています。集中投資をした場合の資産全体の増加率は350%(4.5倍)にもなるのです。
こうやって数字で見ると、集中投資の破壊力が分かりやすいのではないかなと思います。
集中投資のデメリット
集中投資におけるデメリットとは何があるのだろうか。大きく分けて2点になると思います。
集中投資のデメリット
「しっかりとしたチェックが必要」
「大きなダメージを受ける可能性がある」
では、1つずつ確認をしていきましょう。
しっかりとしたチェックが必要
分散投資の場合は、どれか1つが大きく下落しても他の銘柄がカバーしてくれるので、それほど大きな損失にはならないです。なので、各銘柄の業績や株価のチェックが適当でも何とかなります。仮に、1銘柄が大きく下落してからその銘柄を損切りしても、資産全体に与えるダメージは限定的です。
ところが、集中投資の場合は1つの銘柄が投資資産に与える影響が大きいので、損切りをするのであれば早めに対処しておく必要があります。大きな損失になってから損切りしようと思っても、損失が大き過ぎて手に負えない事になる可能性があります。そうなると、一発退場となってしまって投資から撤退しないといけない事にもなります。
こういった事態を避けるためには、しっかりと保有している銘柄をチェック(確認)する必要があります。
- 株価は適正なのか?
- 業績は問題ないのか?
- 株式市場の先行きはどうなのか?
こういった事をしっかりとチェックしながら、投資資産全体をコントロールしていく必要があります。特に保有している銘柄の決算は詳しく確認しながら、業績の見通しや銘柄の状態を把握しておかなければいけません。
なので、初心者よりも投資経験がある程度ある中級者以上の投資家が取り組む方法となります。
大きなダメージを受ける可能性がある
集中投資の大きなデメリットが大ダメージを受ける可能性があるという事ですよね。集中投資は、諸刃の剣ともいえると思います。大きく増える可能性があるというメリットがある反面、同じように大きなダメージを負う可能性があるという事ですよね。投資は、大ダメージを負うと一発退場になってしまう事もあるので要注意です。
では、実際にどれくらい違うのかを、500万円の投資資金を分散投資(20銘柄を保有)する場合と集中投資(2銘柄を保有)する場合で比べてみましょう。
※分散投資は20銘柄を25万円ずつ保有。集中投資は2銘柄を250万円ずつ保有
1銘柄が半分に下落(50%下落)、残りの銘柄は株価が変わらなかったケースで見ていきましょう。
投資方法 | 株価が半分下落 | 株価は変化なし(分散は19銘柄) | 投資資産合計額 | 減少金額 |
---|---|---|---|---|
分散投資 | 25万円×0.5倍=12.5万円 | 25万円×1倍×19銘柄=475万円 | 12.5万+475万=487.5万円 | 12.5万円 |
集中投資 | 250万円×0.5倍=125万円 | 250万円×1倍×1銘柄=250万円 | 125万+250万=375万円 | 125万円 |
集中投資は増える時は大きく増えるけれども減る時は大きく減るというのが数字で表すとより一層実感できますよね。
分散投資をしていると、株価が半分になってしまった銘柄があっても、全体に与えるダメージは軽微で済みますよね。分散投資だと減ってしまった金額は僅か12.5万円だけですからね。元本の500万円から考えると、分散投資はたったの2.5%しか減っていないので、この程度の減少ならば何も問題ないですよね。
一方で、集中投資をした場合は、1銘柄が半分に下落すると大ダメージを受けてしまいます。125万円も減ってしまうので、元本の500万円から考えると、集中投資は25%も減少している事になります。これだけ減ってしまうと取り戻すのが非常に困難になってしまいます。
集中投資で目論見を見誤った際には、大きなダメージが降りかかってくる事になります。これを避けるために、集中投資は大きな減少をする前に損切りが必要となります。ゆえに、初心者には難易度が高く、中級者以上の投資家でないと取扱いが難しい事となります。
まとめ
投資をしていると、資産を大きく増やす為に集中投資を戦略的に取り込んで使用する事を検討する機会があるかもしれません。
しかし集中投資は、大きく増える反面大きく減るリスクも高く、大きな損失を避けるために損切りが必要となります。この損切りは心理的な影響によって実行する事が難しく、気が付けば結論を後回しにして損失が更に拡大していくという事が往々にしてあります。ゆえに、初心者は集中投資を取り入れた運用をする事は避けた方がよいとされています。
通常は、分散投資をして安定的に長期間にわたって投資を続けていく事がセオリーです。
基本的には、初心者のうちは集中投資は避けて分散投資を心掛けていきましょう。
ただ、ある程度の投資経験を経て、様々な経験を重ねる中で、資産を大きく増やす為の選択肢として集中投資を選ぶことがあるかもしれません。
その際には、「段階的に資金を入れていく事」「ナンピンはしない事」「損切りを躊躇しない事」などを考慮しながら取引をする必要があります。
もしも貴方が投資経験を積み重ねて、リスクを承知のうえで集中投資を試みるようであれば、上記に書いている3つの事を守りながら運用をしてみてください。集中投資の実践的なアドバイスは、また後日の機会にでもお伝えしようと思います。
コメント